「もう一度人生をリセットしたい」
英語が好きで、将来は国際的な仕事に就きたいという希望を持っていたんです。地元の鹿児島の短大から4年生の大学へ編入したのも語学力を磨きたいと思ったから。短大では会話中心の授業だったので、もっと言語知識を深めたいと考えたんですね。培った語学力を生かせる職に就くまでは仮の仕事と、勉強を続けながらさまざまな職場で働きました。しかし5年もそんな生活を続けているうちに、果たして自分にしかできない仕事なんてあるのだろうかと悩むように。これからどうしようかと真剣に考えだしていたときに言語聴覚士の資格をとってみたらと勧められました。脳梗塞で倒れた祖父がお世話になっていたこともあり、言語専門のリハビリを行う言語聴覚士のことは知っていましたが、実際に自分が国家資格の必要な言語聴覚士になれるのだろうか。仕事をやめ、専門学校に通うことには、かなり勇気がいりました。しかし、迷っている余裕はありませんでした。就職難と言われる時代、30歳を目前にし再就職をしようにもあとがない。もう一度、人生をリセットするために、国家資格は大きな力となるだろうと。理学療法や作業療法ではなく、言語聴覚療法学科を選んだのは、やはり“言語”に興味があったから。人間が生活を送る上で重要な「話をすること」に障がいのある方を手助けする仕事に興味がわき、この道に進むことを決心しました。
「豊富な臨床実験で学びの目標を再確認」
2月に勤めていた法律事務所をやめ、3月から関西総合リハビリテーション専門学校(以下KRC)に入学。その後の3年間はあっという間でした。語学など文系をメインに勉強してきましたので、物理など理数系は覚えるだけで精一杯、言語治療に理数系が本当に関係あるのだろうか? しかし臨床実習を通し、どの知識が治療にどうつながってくるのか理解できるようになると、面白いように頭に入ってきました。言語聴覚士は、「話す」「聞く」リハビリと思われがちですが、脳神経学や耳鼻咽喉など、医学分野においても様々な知識が求められます。どんな知識も自分のため、患者様のために決して無駄なことではないのです。わからないことがあれば、なんでも相談できる学習環境だったことも心強かったですね。KRCの先生は気さくな人ばかりで話しやすく、どんなときも親身になって私たち生徒のことを考えてくださいました。臨床経験も豊富な方ばかりなので、実習前もそして実習後も納得して勉強に臨めたことを覚えています。
「私にしか出来ない対人援助職を見出したい」
言語聴覚士は仕事するうえで、患者様と個室で接し、個人的な話をお聞きする機会が多くあります。そのため自分自身が人間的に成熟していなければいけないと常に思います。言語聴覚士として働くようになるまで回り道をし、無駄な時間を過ごしてしまった…と後悔していた経験も、今では患者様と接するには決して無駄ではなかったと思えるようになりました。患者様にもいろいろな方がいて、様々な人生経験をされていますからね。さまざまな経験によって、自分の引き出しを増やすことは患者様とのコミュニケーションをとるうえでも役立ちます。自身のコミュニケーション能力で、患者様のコミュニケーションをより円滑にするお手伝いをする。病気や身体に不自由な部分を抱えておられても、コミュニケーション力があれば、社会との接点が生まれますし、それが健康になろうとする意欲や目標にもつながります。患者様と社会を結びつけるという意味で、言語聴覚士の仕事はとても責任があると思います。私と患者様が1対1で向き合い、自分の対応次第で、患者様の人生さえも変わってしまう。医療人としての覚悟と責任、やりがいをもって、頑張っていきたいと思います。
大学で学んだ語学力を生かす国際的な仕事に就きたい。夢が叶うまでと考えていた仕事がいつしか生活費を稼ぐためのものとなり、思い悩む日々。そんなときに言語聴覚士の資格をとってみたらと勧められ、別方面から言葉にたずさわる仕事を目指してみようと、当時働いていた法律事務所を辞職。あとがない状態に自分を追い込み、新たな道に進む決心をする。
関西総合リハビリテーション専門学校に入学。高校を卒業したばかりの新卒同級生とともに学ぶ環境に感じた入学当初の違和感はすぐなくなり、若い友人からの刺激が日々の学生生活をより充実したものに。ドクターから直接授業を受けたり、また系列の医療機関で実際に検査に携ったりと、貴重な実習を多々体験。
国家試験に合格するという同じ目標に向かってクラスメイトと日々勉学に励む。2月の受験後、ネットで自己採点し、合格はできるだろうと予想していたもの、やはり3月末の発表を見るまではドキドキ。見事合格とわかり、喜びをかみしめる。
KRC卒業後は兵庫の脳外科病院でリハビリテーションの治療をおこなう。まだ言語聴覚士としてのスタートラインに立ったばかりだが、患者さんの立場になって、患者さんの立場に立って全力をこの仕事に傾けていきたいと思う。
